MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2025年7月の紹介

Old Mother Goose

Old Mother Goose,
 When she wanted to wander,
Would ride through the air
 On a very fine gander.
がちょう母さん
 ぶらりとでかけ
そらへさんぽにいくときは
 おすのがちょうにまたがっていく
Mother Goose had a house,
 'Twas built in a wood,
Where an owl at the door
 For sentinel stood.
がちょう母さん
 もりの家にすみ
ふくろう戸口で
 みはりつとめる
She had a son Jack,
 A plain-looking lad,
He was not very good,
 Nor yet very bad.
むすこのジャック
 とりえのないかお
べつに可もなく
 不可もない
She sent him to market,
 A live goose he bought;
See, mother, says he,
 I have not been for nought.
むすこ市場へおつかいに
 めすのがちょうをかってきた
どうだい母さん
 おれのうでまえ
Jack's goose and her gander
 Grew very fond;
They'd both eat together,
 Or swim in the pond.
2わのがちょうは
 なかよくなった
えさをつついて
 池でおよいだ
Jack found one fine morning,
 As I have been told,
His goose had laid him
 An egg of pure gold.
あるはれた朝
 むすこのジャック
めすのがちょうのおくりもの
 純金のたまごみつけたそうだ
Jack ran to his mother
 The news for to tell,
She called him a good boy,
 And said it was well.
ジャックははしって母さんに
 いい知らせしらせた
それはおおでき
 母さんよろこぶ
Jack sold his gold egg
 To a merchant untrue,
Who cheated him out of
 A half of his due.
ジャックはたまごを
 うりにいく
ずるい商人だいきんを
 はんぶんしかよこさない
Then Jack went a-courting
 A lady so gay,
As fair as the lily,
 And sweet as the May.
ジャックはようきな
 レディーにいいよる
ゆりのようにうつくしく
 5月のようなあでやかさ
The merchant and squire
 Soon came at his back,
And began to belabour
 The sides of poor Jack.
商人とあいぼう
 ジャックにしのびより
あわれなジャックは
 はさみうち
Then old Mother Goose
 That instant came in,
And turned her son Jack
 Into famed Harlequin.
とそのとき,がちょう母さん
 まのいいことにあらわれて
ジャックのすがたを
 なだかきハーレイクィンにかえ
She then with her wand
 Touched the lady so fine,
And turned her at once
 Into sweet Columbine.
そのつえで
 かの美女にもふれ
あっというまに
 いとしのコロンバインにかえた
The gold egg in the sea
 Was thrown away then,
When an odd fish brought her
 The egg back again.
海のなかにすてられていた
 金のたまごは
きみょうな魚が
 とどけてくれた
The merchant then vowed
 The goose he would kill,
Resolving at once
 His pockets to fill.
商人ちかった
 がちょうをころす
労すくなくて
 おおもうけしよう
Jack's mother came in,
 And caught the goose soon,
And mounting its back,
 Flew up to the moon.
ジャックの母さんわりこんで
 がちょうつかまえ
その背にまたがり
 月をめざしてとんでった

英語圏の子どもたちの間で昔から親しまれてきた「マザーグース」。今回ご紹介する詩には、同名の「Old Mother Goose」というちょっと不思議なおばあさんが登場します。

この、マザー・グースと呼ばれることばが広まる直前のイギリスでは、子ども向けの本のタイトルに“架空の人物”の名前をつけるのが流行していました。
そんな中、17世紀のフランスの作家シャルル・ペローが編んだ童話集がロンドンで英訳される際に、「Mother Goose&s Tales」という副題が付けられました。
さらに、同じ出版社が、この“マザーグース”の名を使って、51曲のわらべ歌を収めた『Mother Goose&s Melody』を出版しました。

このような流れから、「マザーグース」という名前が、特定の作者がいないイギリスのわらべ歌全体を指す呼び名として定着していったのです。実在の人物ではなく、あくまで物語の中の象徴的な存在なんですね。

今回の詩では、マザーグース本人が主人公。ガチョウに乗って空を飛び、魔法を使う、まるで絵本の中から飛び出してきたようなキャラクターです。この詩は、1806年に上演されたイギリスの民話劇(パントマイム)に由来していて、そこには道化ハーレクィンやその恋人コロンバインといったキャラクターも登場します。

この劇の影響で、「とんがり帽子をかぶり、ガチョウにまたがったおばあさん」という姿が“マザーグース”のイメージとして定着しました。

この詩に限らず、マザーグースの歌はただの「昔の歌」ではありません。親子の時間に魔法をかけてくれるような、そんな力があります。絵本のように読んでもいいし、リズムにのせて声に出してみるのもおすすめ。ふとした一節が、きっとお子さんの心に長く残っていくはずです。
ぜひお子さんとの時間に一曲いかがですか?

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。