MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2018年1月の紹介

Tom, Tom, the piper's son

トム,トム,笛吹きんちの せがれ

Tom, Tom, the piper's son,
Stole a pig and away he run;
The pig was eat,
And Tom was beat,
And Tom went howling down the street.

トム,トム,笛吹きんちの せがれ,
ブタを ぬすんでにげた。
ブタを くって
びんた くらって
おんおん ないて いっちゃった。


 ちょっとまぬけなトムのおはなし。“son-run”,“eat-beat”と韻を踏んでいます。本来ですと“run”は“ran”と過去形になるはずですが,ここは韻律を優先して“run”となっているというわけです。

 このマザーグースは「物を盗んだら罰を受けるものだ」という教訓にも聞こえます。トムは一般的な男の子の名前ですが,マザーグースのなかでは“Tom”は“piper”に結び付けられて登場することが多いようです。その昔,ヨーロッパでは笛吹きなどの芸人が自由に地方を行き来していました。「笛吹きんちのせがれのトム」とは,正体のはっきりしない少年といった意味もあるようです。

 中世ヨーロッパではきれい好きのブタを放し飼いにして,辺りをきれいにしていたそうです。放し飼いにされていたからこそ,トムはブタをぬすんでにげることができたのでしょうね。


【画像】アメリカの画家Frederick Richardson(1862–1937)による

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。 イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら, うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。 どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。