MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2018年4月の紹介

Tweedledum and Tweedledee

トウィードルダムとトウィードルディ

Tweedledum and Tweedledee
 Agreed to have a battle,
For Tweedledum said Tweedledee
 Had spoiled his nice new rattle.
Just then flew by a monstrous crow
 As black as a tar-barrel,
Which frightened both the heroes so,
 They quite forgot their quarrel.

トウィードルダム けっとう申しこみ
 トウィードルディ うけてたつ,
ダムくん いうには ディくんが
 ボクの宝もののがらがら こわしたんだもの。
そこへ いきなり おばけガラスがとんできた
 タールのたるみたいに まっくろけ
にたもの たいしょう こしをぬかした,
 けんかのことは すっかりわすれた。


 Tweedledum and Tweedledeeという語は次のようなエピソードに現れます。1725年のロンドンに,ドイツ生まれのGeorge Frederick HandelとイタリアのGiovanni Battista Bononciniというふたりの音楽家がファンをも巻き込んでいがみ合っていました。それをJohn Byrom という人が,ふたりを揶揄して作った詩のなかにこのTweedledum and Tweedledeeということばが登場しています。

 しかしながらTweedledum and Tweedledeeを有名にしたのは,なんといってもルイス・キャロルの『Through the Looking-Glass(鏡の国のアリス)』でしょう。アリスは森の中でとてもよく似ているふたりの小さな男たちに出会います。ふたりの襟にはそれぞれDumとDeeと書かれているので見分けがつくといったほどです。アリスはこのふたりに出会っておもわず,このマザーグースを頭のなかに思い浮かべるのでした。

 Tweedledum and Tweedledeeは,争いながらも実際にはよく似ているふたりの人物を表すことばとして用いられ,「似たり寄ったりのふたり」「かわりばえしない」「どうということのない」といった意味でも使用されます。これらのことばを英訳すると,almost the sameや,very similarとなりますが,Tweedledum and Tweedledeeを使ってみると英語表現に奥深さを感じますね。

【画像】 John Tenniel(Lewis Carroll “Through the Looking-Glass” 1871)

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。 イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら, うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。 どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。