MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2019年6月の紹介

Oh, the brave old Duke of York

威風堂々 ヨーク公

Oh, the brave old Duke of York,
 He had ten thousand men;
He marched them up to the top of the hill,
 And he marched them down again.
And when they were up, they were up,
 And they were down, they were down,
And when they were only half-way up,
 They were neither up nor down.

威風堂々 ヨーク公,
 したがえるは 軍勢一万,
命令一下 山の頂へ行進させて,
 まわれ右して,ふもとへ おろした。
のぼれば 山の上,
 くだれば 山の下,
まん中までしか のぼらなければ,
 上でもない 下でもない。


 この主人公ヨーク公も,マザーグースの人気のキャラクターの一人です。マザーグースのなかには有名な登場人物やキャラクターが多くいます。みなさんもお気に入りのキャラクターをいくつかあげられることでしょう。英語圏では,その名前だけでどんな人物なのかすぐに連想できるのは,マザーグースが人びとのなかでいまでも親しまれているからといえます。

 ここに登場するヨーク公は,Frederick Augustus, Duke of York(1763-1827)というイギリスのジョージ3世の次男で,軍人であった実在の人物を指します。実際は軍人として優秀で,陸軍の改革を行ない,部下からの尊敬を集めていたということです。にもかかわらず,このマザーグースによって,彼は「無能な指揮官」とのイメージがついてしまいました。このようにおもしろく言われてまぬけなリーダーとして後世に名前が残ってしまうのは,マザーグースの遊び心の表われといえるでしょう。

 この人気のヨーク公の銅像は,いまでもロンドンのバッキンガム宮殿から伸びるモール通りにある現代美術館の近くに立って,人々を上から眺めています。ロンドンの人びとはその高い銅像を下から眺めて,このマザーグースを口ずさむのでしょうか。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。 イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら, うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。 どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。