MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2019年10月の紹介

The old woman who lived in a shoe

おくつにすんでる おっかさん

The old woman who lived in a shoe,
She had so many children she didn't know what to do;
She gave them some broth without any bread;
She whipped them all soundly and put them to bed.

おくつにすんでる おっかさん,
子だくさんで お手あげだったって,
スープなんかのませておいて パンはぬき,
うむをいわさず ひっぱたいて ねかせたんだって。

 old womanが登場するマザーグースはたくさんありますが,そのなかでも人気の唄です。マザーグースの絵本にも多く取り上げられていて,どれも楽しく描かれています。母親の忙しさを面白おかしく表現するこのマザーグースに,育児に悩む母親の姿は見られません。

 せまい家に多くの子どもが住んでいて雑然としている風景。子どもたちがあちらこちらでそれぞれになにかをしていて,母親はその世話に忙しく家計も苦しい。夜には子どもに夕飯を食べさせ,着がえさせて,寝かしつける。そんな光景はどこにでもある家族といえます。

 このold womanのモデルは誰かと,いろいろな説があります。けれどもどこの時代にも,どこの国にも,このような母親の忙しい姿はあるし,そのような母親に育てられる兄弟姉妹はいるといえるでしょう。もしかすると,そのようにして育った人が,自分の子ども時代を懐かしんでうたったのかもしれません。

ビートルズはマザーグースをモチーフとした曲をいくつか作っています。「Lady Madonna」(1968)の冒頭では「子どもが多く家計が苦しい」と歌っていますが,このマザーグースを引用していると思われます。世界的なアーチストも取り上げるこのマザーグースを,みなさんもぜひ楽しみながら唱えてみてください。


Illustration by William Wallace Denslow, from a 1901 edition of Mother Goose

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。 イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら, うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。 どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。