MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2020年6月の紹介

Four and twenty tailors

24人のしたて屋

Four and twenty tailors
 Went to kill a snail,
The best man among them
 Durst not touch her tail;
She put out her horns
 Like a little Kyloe cow,
Run, tailors, run,
 Or she'll kill you all e'en now.
24人のしたて屋
 かたつむり退治
いせいのいいのが
 しっぽにもさわれない
かたつむりが角だした
 ちいさなめうしさながら
はしれ,みなの衆,はしれ
 返り討ちになるぞ

 イギリスでは,仕たて屋には、臆病者というイメージがあるそうです。このマザーグースをみてみるとまさにその通りです。ちいさなかたつむりに対して24人もの仕立屋が挑んでいます。誌のなかにでてくる「Kyloe cow(カイロー牛)」はスコットランド高地地方に住む牛で、長い角に特徴があり,その点がかたつむりに似ていたのでしょうか。寒さや雨に耐えられる長くフサフサした毛にも特徴のある牛です。

 ところでかたつむりが登場するマザーグースには、"What a little boys made of?" や "Snail, snail, Put out your horns" があります。なにかすこしかわった形とゆっくり歩く姿に子どもは親しみを感じるのでしょうか。日本にも「でんでんむしむし、かたつむり」という童謡がありますね。かたつむりをからかうような唄はイギリスにも日本にもあるのですね。

  『ピーターラビット』シリーズの『グロースターの仕たて屋』のなかでは、ねずみ達が服を仕立てている場面で歌っています。このおはなしの仕たて屋も腕はいいけれど,ひんそうな男でした。イギリスの人びとには、「仕たて屋」といえばこのマザーグースにあるように,臆病でしがない仕たて屋というイメージがうかぶのでしょうか。

Illustration by Leslie Brooke

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。