MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2020年7月の紹介

Tinker, Tailor

いかけや したてや

Tinker,
 Tailor,
Soldier,
 Sailor,
Rich man,
 Poor man,
Beggarman,
 Thief.
いかけや
 したてや
へいたい
 ふなのり
かねもち
 もんなし
ものごい
 ぬすっと

 イギリスでは男の子が将来を占ったり,女の子が結婚相手を占ったりするときの文句として歌われてきました。Tailorは前回の「Four and twenty tailors」にも登場しましたが,紳士のスーツで有名なイギリスでは,憧れの職業なのでしょうか。SoldierとSailorも,子どもには人気のある仕事なのかもしれません。TinkerとTailorは街中で細かい手作業をする職人,SoldierとSailorは戦場や海の上での勇ましい職業ともいえます。それぞれ頭韻・脚韻の両方をふんでいるのは,偶然でしょうか。アメリカでは,後ろの4行を,「Doctor, Lawyer, Merchant, Chief」と歌うこともあるそうです。

 Tinkerは「鋳掛け屋(いかけや)」という意味です。金属が貴重品だった昔は,農具はもちろん,鉄や銅の鍋や釜もたいせつな道具でした。ですから穴があいたり破れてりしても直して使っていたので,それらを修理する鋳掛け屋という職人がいたのです。鋳掛けとは穴があいたり,欠けたりした部分に金属を溶かしたものを注入して凝固・接合させる技術のことで,いわゆる溶接技術です。日本でも江戸時代から昭和時代の初期に,鋳掛け屋さんが町を「鋳掛け~,鋳掛け~」と叫びながら歩いて,修理をしていました。

 イギリスのファンタジー作品『ピーター・パン』に登場するティンカー・ベル(Tinker Bell)は鋳掛け屋の妖精です。英語のtinkeringに「へまな職人」,「へたな修理」,「いじり回す」などの意味があります。鋳物修理の技術が未熟で,失敗も多かったのでしょう。ティンカー・ベルの性格を思い浮かべると,その名前がついたのもわかる気がしませんか?

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。