MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2020年8月の紹介

O, Yankee Doodle came to town

おお ヤンキー・ドードル こうまにのって

O, Yankee Doodle came to town,
 Riding on a pony;
He stuck a feather in his cap
 And called it macaroni.

Yankee Doodle keep it up,
 Yankee doodle dandy;
Mind the music and the step,
 And with the girls be handy.

おお ヤンキー・ドードル こうまにのって
 いきけんこうで まちにのりこむ
ぼうしにはねを いっぽんさして
 マカロニだぞと とくいまんめん

おお ヤンキー・ドードル げんきでいけよ
 ヤンキー・ドードル いいおとこ
うたにあわせて おいちにさんし
 かわいいむすめ りょうてにはな

 このマザーグースは,いまではアメリカの民謡として有名です。Yankeeとはアメリカ北東部のニューイングランド地域の人びとのことを指しますが,もともとは南部の人びとが北部の人びとのことを呼んだ名称でした。イタリア産のmacaroniは「だて男」の意味。

 もともとは1500年代にオランダで収穫の歌として歌われていました。その後,イギリスとフランスが北アメリカをめぐって戦ったフレンチ・インディアン戦争(1755-1763)年の際には,イギリスの軍隊がアメリカ人をからかいながら歌ったそうです。けれどもアメリカ人は反対に,この歌を自分たちの誇りとして,みずからを鼓舞するために歌いました。数年後のイギリスからの独立戦争(1775-1783)の際には,戦争の指導者で,のちのアメリカ初代大統領ジョージ・ワシントンの名前を歌詞に入れて歌っていました。1978年にはアメリカ東部・コネチカット州の州歌となっています。ローラ・インガルス・ワイルダーが書いた『農場の少年』では,独立記念日にローラのお父さんがこの歌を歌っています。

 日本ではこの曲は「アルプス一万尺」の歌詞で歌われていて,有名です。日本ではじめて演奏されたのは,黒船が来日した1853年7月14日のこと。ペリーが久里浜で大統領親書受け渡しをする式典で,アメリカ軍の鼓笛隊が演奏したそうです。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。