MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2020年10月の紹介

Little Miss Muffet

マフェットじょうさん

Little Miss Muffet
Sat on a tuffet,
Eating her curds and whey;
There came a big spider,
Who sat down beside her
And frightened Miss Muffet away.

マフェットじょうさん,
いすに すわって,
ヨーグルトを 食べていた,
でっかい クモが
よってきた。
マフェットじょうさん,すっとんでにげた。

 落ちついてヨーグルトを食べていたら,クモが近くにやってきてびっくりした女の子の話。このマザーグースによって,クモと言えばマフェットちゃん,マフェットちゃんと言えばクモというイメージが英語圏にはあるそうです。また「無防備にしていたら,なにか大きな災難がふりかかってきた」という例えにも使われます。この詩の作者は,16〜17世期に実在した昆虫学者のトマス・マフェット氏だという説もありますが,定かではありません。

 Muffet はtuffetと押韻していますが,他のヴァージョンには,Mary Easter/testerやMiss Mopsey/shopseyと,押韻するために並べた意味不明のものもあります。tuffetは三本脚の低い椅子のことです。その昔には草などが丸まってできた場所を指していたようで,このマザーグースの絵のなかにも,マフェットちゃんが,草の上に腰かけているものもあります。

 クモは巣の形から何か絡めとるといったようなイメージもあり,陰湿なものの象徴に考えられることもありますが,ヨーロッパでは「神の使い」,ネイティブ・アメリカンのあいだでは「知恵者」と言い伝えられているそうです。日本では「朝のクモは殺すな」と言われ,クモは幸運を運んでくると言われています。ハロウィーンでは,多くのクモが現れることでしょうが,どうか嫌わないであげてくださいね。

Illustration by Arthur Rackham

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。