MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2021年2月の紹介

There was a crooked man, and he walked a crooked mile

曲がり男が,曲がり道 ゆき

There was a crooked man, and he walked a crooked mile,
He found a crooked sixpence against a crooked stile;
He bought a crooked cat, which caught a crooked mouse,
And they all lived together in a little crooked house.

曲がり男が,曲がり道 ゆき,
曲がり柵のわきで 曲がり銀貨,見つけた。
曲がりネズミを捕らえた 曲がりネコ 買い,
みんないっしょに 曲がり小屋でくらした。

 人差し指と中指で曲がり男を作り,もう片方の腕で作る曲がり道を歩く所作で,子どもは楽しみなながら繰りかえし唱えることができます。2行ずつ韻を踏んだマザーグースですが,crookedが繰り返され,その音の繰り返しと意味のおもしろさがこの歌が人気の秘密でしょう。

 マザーグースは多くの小説などに登場します。イギリスの女性推理作家アガサ・クリスティは,作品のなかにマザーグースを効果的に使用していくつかのミステリー小説を書きました。このマザーグースも,”Crooked House(ねじれた家)”という本のタイトルになっています。crookedには,「曲がった」という意味以外に,「ひねくれた」「よじれた」という意味があります。また英語の慣用句”walk crooked mile”は,「よこしまな道を行く」,「悪の道を進む」という意味もあり,この小説は資産家の老人が殺され,個性豊かな遺族たちに疑いがかかるというミステリー小説となっています。日本でも2019年に「ねじれ家」として映画も公開されました。

 絵本作家のなかには,人々がよく知っているマザーグースを,自分のイメージで自由に描きたいと思っている人が多くいます。このマザーグースも,作家のイメージによってさまざまに描かれているユニークなイラストが多いので,見比べてみるのもおもしろいでしょう。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。