MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2021年8月の紹介

Bobby Shafto's gone to sea

ボビー・シャフトー 波のかなた

 Bobby Shafto's gone to sea,
  Silver buckles at his knee;
 He'll come back and marry me,
  Bonny Bobby Shafto!

 Bobby Shafto's fat and fair,
  Combing down his yellow hair;
 He's my love for evermore,
  Bonny Bobby Shafto!

 ボビー・シャフトー 波のかなた,
  銀のくつ下どめ つけて,
 もどってきたら 花むこさん,
  いとしいボビー・シャフトー!

 ボビー・シャフトー おでぶで金ぱつ,
  くしをきれいに いれている,
 わたしの愛は いついつまでも,
  いとしいボビー・シャフトー!

 いとおしいボビー・シャフトーを思う女性の歌です。この女性は婚約者なのでしょうか。なぜボビー・シャフトーは女性をおいて海に出たのでしょう。想像をはたらかせて話しあってみると,なにかすてきな物語がうまれそうです。

 bonnyは,スコットランドの方言で「素敵,かわいい」という意味です。スコットランドには「My Bonnie Lies over the Ocean」という有名な民謡があります。silver buckleは,短いズボンの裾が広がらないようするための金具です。くしをきれいにいれて,銀でできたものを身につけるくらいですから,ボビー・シャフトーはおしゃれで裕福な人だったのでしょうか。

 彼にはモデルが何人かいます。そのうちのひとりは,アイルランドのウイットロック州ホリブルックにいた国会議員で,1737年に亡くなった,ロバート・シャフトーという人です。この男性はとても美男子で,多くの女性が恋い焦がれていたということです。残っている肖像画によると,おでぶということはなく,金髪で端正な顔立ちだったようです。

 どのような身分の どのような容姿の男性でも,ここまで女性に好きになられたら,帰ってきた暁には結婚してしまうことでしょう。どうぞお幸せに。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。