MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2021年9月の紹介

Sing a song of sixpence

6ペンスのうたうたおうよ

Sing a Song of sixpence,
 A pocket full of rye;
Four and twenty blackbirds,
 Baked in a pie.
6ペンスのうたうたおうよ
 ポケットにライむぎ
クロウタドリ 二十四わ
 パイがやけた
  
When the pie was opened,
 The birds began to sing;
Wasn't that a dainty dish,
 To set before the king?
パイをきったら
 クロウタドリ うたいだす
王さまにさしあげる
 おいしいごちそうどこいった?
  
The king was in his counting-house,
 Counting out his money;
The queen was in the parlour,
 Eating bread and honey.
王さまはしごとしつで
 きんかをかぞえておられた
女王さまはおいまで
 ハチミツパンをめしあがる
  
The maid was in the garden,
 Hanging out the clothes,
There came a little blackbird,
 And snapped off her nose.
女中さんがおにわで
 ふくをほしていると
かわいいクロウタドリとんできて
 女中さんのはなをちょん

 マザーグースのなかでも人気があり,スコットランドのダンス曲の爽快なリズムで歌われます。Sing a Song of sixpence は,「s」がくり返される頭韻になっています。「Sixpence(6ペンス)」は,イギリスで16~20世紀に鋳造されていた通貨です。当時は,補助貨幣の6ペンス硬貨40枚(240ペンス)が1ポンドでした。現在は100ペンスで1ポンドです。

 16世紀頃,イギリスではお客さまをもてなす際に,パイに何かを入れて楽しませることが流行したそうです。料理人はパイの皮を焼き,その中に鳥を入れてふたをします。そしてお客さまの前にそのパイが置かれたとき,鳥が飛び出すという仕掛けが実際にあったそうです。このマザーグースの王さまも,そのようなおもてなしをうけたのでしょうか。このマザーグースに出てくる「blackbird」は,イギリスでは「Turdus merula(クロウタドリ)」を指しています。アメリカに生息するblackbirdとは異なる種類の鳥で,日本では見ることはできません。

 アメリカの物語『大草原の小さな町』では,トウモロコシやカラス麦の畑を台無しにしたムクドリをお父さんが銃で撃ってとらえると,お母さんはそのムクドリをつかってパイを焼きました。その日の夕食のテーブルではローラ姉妹がこの歌を歌いだしました。有名なマザーグースですので,このように小説や,ビートルズの歌などにも登場します。マザーグースを知っていると,それらの味わい方も違います。いわば英語圏の常識となっているマザーグースは,英語を身につけるのに必要な文化といえるでしょう。ぜひ軽快なリズムとともに唱えてみてください。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。