MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2022年5月の紹介

How many miles to Babylon?

バビロンまでなんマイルある?

How many miles to Babylon?
Three score miles and ten.
Can I get there by candle-light?
Yes, and back again.
If your heels are nimble and light,
You may get there by candle-light.
バビロンまでなんマイルある?
20かける3たす10マイル
ろうそく消えないうちにつける?
じゅうぶん行って戻ってこられる
かろやかに はしりはしれば
消えないうちにつけるだろうよ

 一行ずつかけあいでリズムよく歌いましょう。scoreは20のことですから,「Three score miles and ten」は70マイルとなります。さまざまな解釈のあるマザーグースです。昔は70(歳)が人間の寿命とされていたことから,バビロンはじつに遠いところにあるとか,ろうそくに灯をともしてそこへ行くということは寝室に行くことでありバビロンは眠りの国である,など解釈がさまざまあります。みなさんはどのようにイメージしますか。

 このマザーグースは,もともとは旧約聖書にもある,バビロン捕囚の物語をうたったもののようです。紀元前597年,新バビロニアのネブカドネザル2世がユダヤ王国を征服し,そしてユダ王国のユダヤ人たちを捕虜としてバビロンへと連行し,移住させたのです。けれども50年後に新バビロニアが滅ぼされると,ユダヤ人は解放されパレスチナに戻ることができました。

 『宝島』の作者ロバート・ルイス・スティーヴンソンは「Pirate Story」という詩のなかで,海賊の行先のひとつにバビロンを挙げています。アメリカのポーラ・フォックスは,10歳になる黒人少年の内面の孤独を描いた物語『How many miles to Babylon?(バビロンまではなんマイル)』を書きました。また日本でも,NHKの人形劇で有名な井上ひさし氏の『ひょっこりひょうたん島』で,宝探しの歌としてこのマザーグースが登場します。日本語に訳されているので「バビロンまでは何センチ?」となっています。日本の作品にもマザーグースが登場することがありますが,マザーグースだと気づくとよりいっそう作品を楽しめることでしょう。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。