MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2022年9月の紹介

Old King Cole

   Old King Cole
   Was a merry old soul,
And a merry old soul was he;
   He called for his pipe,
   And he called for his bowl,
And he called for his fiddlers three.
   Every fiddler,
   He had a fiddle,
And a very fine fiddle had he;
   Oh, there's none so rare
   As can compare
With King Cole and his fiddlers three.
 コール王さま
 こころおおらか
いつでもほがらか
 パイプに
 さかずき
バイオリンひき三人ごしょもう
 バイオリンひきの
 バイオリン
それぞれ音色じまん
 これぞ おにあいの
 くみあわせ
コール王さまとバイオリンひき三人

 マザーグースの本のタイトルにも使われるほど有名なマザーグースです。歌う際のメロディがきれいなのも人気の一因でしょう。まるで3人のバイオリン弾きの音色にのって歌うかのように,軽やかに歌いたいマザーグースです。最初の三行では,Old King Cole(he)とmerry old soulを反転させて,美しく強調しています。これは交錯配列法(chiasmus)と呼ぶ,聖書にもよく見られる表現方法です。

 コール王のモデルは諸説あります。紀元前3世紀の頃,イングランド東部のエセックス州に実在したケルトの王様のコール王だったという説。または17世紀にイングランド南東部のバーク―シャー州にいた毛織物商で大金持ちのコールブルックだったという説。コールブルックには300人の召使いと,自宅には140人の使用人がいたといわれています。

 マザーグースによく出てくる「fiddle」ですが,日本では多くの場合「violin(バイオリン)」と呼びます。同じ楽器ですが,演奏のスタイルなどによって呼び方が変わります。クラシック音楽やオーケストラ,交響曲,室内楽の場合に使用されるときはバイオリンと呼ばれます。一方フィドルは,フォーク・ミュージックやカントリー・ミュージックなどを演奏するときに呼ばれます。Old King Coleのために演奏していた3人は,どんな音楽を奏でていたのでしょうか。

【画像】“Old King Cole” by William Denslow

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。