MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2022年10月の紹介

Ride a cock-horse to Banbury Cross

Ride a cock-horse to Banbury Cross,
To see a fine lady upon a white horse;
Rings on her fingers and bells on her toes,
And she shall have music wherever she goes.
木馬にのって バンベリー・クロスへ
白馬にのった レディーをみるため
手の指に指輪 足の指におすず
どこいくにも 楽隊がおとも

 膝の上に幼い子どもをのせて馬に乗るかのようにパッカパッカと揺らして,あやすときに歌うマザーグースです。イギリスの人々はこの歌を聞くと,幼い頃の母親とのふれあいを思い出すそうです。

 fine ladyは,イングランド中部のコベントリーに住んでいたレオフリック伯爵の妻、ゴディバ夫人がモデルだという説があります。暴君であったレオフリック伯爵はコベントリーの人々に高い税金を課しました。「裸で馬に乗り,街を走るなら高い税金を課すことをやめる」という条件をだした夫のために,夫人は裸で馬に乗ってその街を走りぬけました。長い髪がその姿を隠したので頭と足しか見えずに済み,伯爵も改心して高い税金を課すことを止めたそうです。

 Banburyは,イングランド南東部のオックスフォードシャー州にある町です。13世紀には重要な羊毛取引の中心地に成長。運河や鉄道が通り,街は商業都市として成長していきました。当時も商業都市としてにぎやかでしたが,近年には高速道路が開通しロンドンから2時間弱で行けるようになり,いまでもBanburyは非常に魅力的で活気のあるショッピングの街です。またこの街は「Banbury Cakes」という,ドライフルーツをスパイスや砂糖で煮詰めたものを入れたパイでも有名です。町のシンボルである十字架の塔,Banbury Crossが立っている交差点の近くには,fine ladyの銅像があります。マザーグースは人々の生活のなかに存在しているのですね。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。