MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2022年12月の紹介

Dame, get up and bake your pies

Dame, get up and bake your pies,
 Bake your pies, bake your pies;
Dame, get up and bake your pies,
 On Christmas day in the morning.
Dame, what makes your maidens lie,
 Maidens lie, maidens lie;
Dame, what makes your maidens lie,
 On Christmas day in the morning?
Dame, what makes your ducks to die,
 Ducks to die, ducks to die;
Dame, what makes your ducks to die,
 On Christmas day in the morning?
Their wings are cut and they cannot fly,
 Cannot fly, cannot fly;
Their wings are cut and they cannot fly,
 On Christmas day in the morning.
おくさん起きてパイ焼こう
  パイ焼こうパイ焼こう
おくさん起きてパイ焼こう
  クリスマスのあさ
娘さんなぜ起きてこない?
  起きてこない起きてこない
娘さんなぜ起きてこない?
  クリスマスのあさ
アヒルはなぜ死んでいく?
  死んでいく死んでいく
アヒルはなぜ死んでいく?
  クリスマスのあさ
つばさ切られて飛べやせぬ
  飛べやせぬ飛べやせぬ
つばさ切られて飛べやせぬ
  クリスマスのあさ

 クリスマスに歌われるマザーグースのひとつです。マザーグースのなかには,行事や季節をテーマにしたものがいろいろあります。

 イギリスでクリスマスに焼くパイといえば,ひと口大のミンスパイ(Mince Pie)です。ドライフルーツを細かく刻んで,砂糖,スパイス,ブランデーなどと煮込んでパイに入れ,上に星や十字,雪の結晶などのパイ生地をのせて焼きます。子どもたちはクリスマス・イブに,サンタクロースにはこのミンスパイ,トナカイにはニンジンを用意するのが伝統的な過ごし方だそうです。

 このマザーグースは,ビアトリクス・ポターのピーターラビットシリーズ『グロースターの仕たて屋』にも登場します。この物語では,クリスマス・イブからクリスマスの朝までのあいだは、すべての動物が口をきくことができると語られています。そして教会の鐘が真夜中の12時を打つと、古い家の屋根や切妻からクリスマスの歌をうたう呼び声が聞こえはじめますが、なかでも一番はやくおんどりが「Dame, get up, and bake your pies!」と歌いだします。まさに「クリスマスのあさ」におんどりは,このマザーグースを歌ったのでした。この物語には,ほかにもマザーグースがいくつか登場します。

 クリスマスのマザーグースとしては「The first day of Christmas」が有名で,日本でもクリスマスの時期になると,街によく流れています。マザーグースは英語圏の人びとの生活のなかに,よりそっているといえるでしょう。みなさんもこのマザーグースを歌って,温かいクリスマスをお過ごしください。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。