MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2023年9月の紹介

The man in the moon drinks claret

The man in the moon drinks claret,
But he is a dull jack-a-dandy;
Would he know a sheep's head from a carrot
He should learn to drink cider and brandy.
月にいる男あかぶどう酒のむ
ところがまぬけなめかやしで
羊の頭とにんじんもみわけぬ
リンゴ酒の味わかりっこない

 The man in the moonは,他のマザーグースにも登場しますが間抜けな人物ばかり。jack-a-dandyは,ちょっとおしゃれで生意気な奴という意味。羊の頭とにんじんの違いがわからないくらい間抜けで,おしゃれで,生意気な月にいる男。このマザーグースは,月の模様が男の顔に見えるところから生まれたのかもしれませんね。

 月の模様になにが見えるのかは,国や地域,国民性などによりいろいろな見方をされてきました。日本や中国,韓国などでは月にうさぎがいるとの言い伝えがありますが,他の国や地域ではどうでしょう。インドではワニ,インドネシアでは編み物をする女性,モンゴルでは犬,ベトナムでは大きな木とその下で休む男性,アメリカではチーズ,カナダではバケツを運ぶ少女,中南米ではロバ,ヨーロッパでは男の顔のほかに,大きなハサミを持つカニ,東ヨーロッパでは髪の長い女性,北欧では腰かけて本を読むおばあさん,中東・アラビア地域ではライオン,などといわれるそうです。それぞれの生活文化に関係しているものを連想するのでしょうか,いろいろなものが登場しますね。

 日本では9月下旬から10月上旬に十五夜(旧暦8月15日)がきます。秋の夜空の美しい月をながめる「お月見(十五夜)」は,日本の秋の風物詩ともいえます。今年の十五夜を眺めながら,他の国や地域の月に見えるものを探してみてください。なにがいちばんあっているように思いますか?

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。