MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2023年11月の紹介

had a little hen

I had a little hen,
 The prettiest ever seen;
She washed up the dishes,
 And kept the house clean.
She went to the mill
 To fetch me some flour,
And always got home
 In less than an hour.
She baked me my bread,
 She brewed me my ale,
She sat by the fire
 And told a fine tale.
ぼくのかわいいめんどりさん
 どこのだれよりあいらしい
おさらあらいもいそいそと
 家はいつでもぴかぴかきれい
こなやへおつかい
 こむぎこかいに
よりみちしないで
 すぐにただいま
パンをやくのもぼくのため
 お酒づくりもぼくのため
ひぐれてぬくぬく暖炉の前で
 おはなしひとつぼくのため

 このマザーグースでは,「hen」がかわいくて仕方ない気持ちが伝わってきます。このマザーグースに登場する「hen」は「めんどり」ですが,お部屋を掃除してパンを焼いてくれ,おはなしをしてくれるというのは,ちょっとふしぎですね。じつは17~18世紀のスコットランドでは,「hen」は「woman(女性)」や「dear creature(愛しいもの)」を意味し,愛情を込めて使われていたようです。「hen」とは「ステキな女性」のことだったんですね。

 ニワトリを表わす英語にはいくつかあります。「hen」は大人の雌鶏,「rooster」は大人の雄鶏,また「chick」はヒヨコを指します。またトリ肉を指す英語では,生きている鶏は「poultry」,食用肉になると「chicken」と言います。またこのマザーグースにでてくる「ale」は古くから作られているビールのこと。イギリスやベルギーでは,このビールが好まれています。子どもの詩にアルコールは相応しくないと,「tea」に置き換えているバージョンもあります。

 お掃除も料理も,おはなしを語るのもじょうずで,お買い物からはさっさと帰って来るような,よくできたお嫁さんがとても愛おしい。けれどもこのマザーグース全体が,過去形で表わされているのが少々気になりませんか。その愛しいお嫁さんはいまは亡くなってしまって,彼女を懐かしく思う気持ちを歌ったのでしょうか。お嫁さんはいまどうしているのでしょうか。みなさんはどのように想像しますか。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。