MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2017年5月の紹介

Ring-a-ring o' roses

バラの花輪だ 手をつなごうよ

Ring-a-ring o' roses,
A pocket full of posies,
  Atishoo! Atishoo!
We all fall down.

バラの花輪だ 手をつなごうよ,
ポケットに 花束さして,
  ハックション!ハックション!
みいんな ころぼ。


 子どもたちが手をつないで丸くなったら,このライムを口ずさんで回りはじめるといわれるほど有名なマザーグースです。大草原シリーズの『プラムクリークの土手で』で,ローズは学校でこの遊びを飽きるくらいしていましたね。マザーグースにはほかにも「Here we go round the mulberry bush(桑の木のまわりをまわろうよ)」という輪遊び唄があります。
 この“Ring-a-ring o' roses”は,1665年,ロンドンで大流行したペストのことを表しているともいわれています。バラ色の発疹はペストの初期症状で,ポケットの中の花束はペスト治療の薬草だけれど,くしゃみがでてしまったらもう末期症状。そして最後にはみんな倒れてしまった,という話です。その昔,ヨーロッパではペストが流行って人口の1/3が亡くなるということもありました。そのような歴史的背景があるからか,細菌兵器が鍵となる映画『ミッション・インポシブル2』の冒頭では,子どもたちがこのマザーグースで遊んでいる様子が映り,観客を物語へと誘っています。

 ところで『ロミオとジュリエット』のなかでは,ジュリエットからロミオへの手紙を託されていたジョン修道士という登場人物がいます。彼が同行してくれる修道士を捜していたところ,その修道士が見舞っていた病人が伝染病の恐れがあり,その家にふたりとも足止めされてしまいました。そのためロミオに手紙を渡せなかったということでしたが,この伝染病もじつはペストだったのです。
 このようにひとつのマザーグースを知っていると,さまざまな作品をまた違った角度で楽しむことができます。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。 イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら, うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。 どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。