MOTHER
GOOSE今月のマザーグース

2025年4月の紹介

Doctor Foster went to Gloucester

Doctor Foster went to Gloucester フォスター博士グロースターへ
In a shower of rain; どしゃぶりのなか
He stepped in a paddle, 水たまりにはまり
Right up to his middle, おなかまでつかり
And never went there again. 2どといかぬわい

このマザーグースには,グロースターへ向かったフォスター博士が登場します。ある日,どしゃぶりの雨の中を彼が進んでいくと,大きな水たまりにはまってしまい,腰までびしょ濡れ。結局,二度とその地を訪れなかった――という,ちょっとユーモラスで哀れなエピソードです。

さて,このフォスター博士にはモデルがいるという説もあるのです。
その人物とは,13世紀のイングランド王,エドワード1世。

言い伝えによると,ある雨の日,彼がグロースターを馬で訪れた際,浅いと思って踏み入れた道が,実は深いぬかるみだったのだとか。馬ごと泥に沈み,なんともみっともない姿に。それがあまりに恥ずかしく,それ以来,グロースターを訪れることはなかったとも言われています。

エドワード1世はその背の高さから「Longshanks(ロングシャンクス)」――つまり「長い脚」というあだ名がついています。なんと2メートル以上の大男だったとか。そんな長い脚でも馬ごと沈んでしまうような沼...相当深かったんでしょうね。

グロースターはもともと洪水が起こりやすい地域。もしかするとこの詩は,そんな土地柄を背景に,水たまりの危険性を子どもたちにユーモラスに伝える役割を果たしていたのかもしれません。

たった5行の詩にも,たくさんの歴史やユーモアがこめられているようで,面白いですね。

マザーグースとは,英語圏の子どもたちの間で古くから伝承されてきたわらべうたのことです。イギリスではナーサリー・ライム(Nursery Rhymes)と呼ばれています。親から子どもへ,子どもからお友だちへ,また子どもからその子どもへと,時代や伝える人によって少しずつ変化しながら,うたいつがれてきた「古くて新しいうた」です。マザーグースは,うただけでなく早口ことば,なぞなぞ,昔ながらのイギリスの風俗・習慣を伝えるもの,人を皮肉ったもの,ナンセンスなど様ざまな種類があります。どれも韻をふんだり,くり返したりと英語の「音」や「リズム」が心地よく,思わず口にだして唱えたくなるものばかりです。